木屋町六角の“緑の店”として長年認識はしていたこちらのお店。
なんとなく常連さん度が高いのかしらと思い込んでいたのですが、今回伺ってみると決してそうではないフランクな空間だと判明しました。
オーナーの山下哲司さんは、元々はワインバーとビアバーの2軒を別々に営んでいたのだそう。それを1軒にまとめたのが現在の『OPUS ONE & meno mosso』。
「最初はスパークリングワインと活性日本酒を扱っていたんですけど、泡が出る酒つながりでビールも扱うようになりました。せっかくなら、どこでも飲めるようなビールじゃないのを置きたいと思ってクラフトビールに注目したんです」
いろいろな種類を置けるからと、当初はボトルビールが中心。今でも常時20種類ほどがそろっています。
「扱い始めた10年ほど前は正直いって国産クラフトビールは残念な味のものも多かったけど、最近は本当においしいものが増えてますよね」
さらに現在は3種類の樽生ビールも提供しています。
「その時にいいなと思ったもの、飲んだことがないものを選ぶ感じですね。特に『志賀高原ビール』『六甲ビール』『ベアードビール』を扱うことが多いかな。クラフトビールのなにがいいって、“知ってるビールの味じゃない”味に出合えることだと思うんですよね」
取材日の「本日の樽生」は『志賀高原ビール』の「IPA」、『常陸野ネストビール』の「ホワイトエール」、『箕面ビール』の「みのおスタウト」でした。
志賀高原ビールのIPAは、グレープフルーツを思わせるような苦みと甘みがあり、スキッとキレるような味わい。
「IPAは苦いビールというイメージが強いけど、実はちゃんと甘みがあってこその苦み。隠れ甘党の人がこの甘みを楽しみたくて支持しているんじゃないかと思いますよ」
常陸野ネストビールのホワイトエールは端正なホワイトビールで、ビールなのに冷製スープのような深い味わいが感じられます。その後に飲むと、箕面ビールの箕面スタウトのコク深いほろ苦さがいっそう際立ちます。
クラフトビールの味の振り幅って本当にすごいですよね。
こちらではフードメニューも充実しているので、ぜひともビールと一緒にオーダーを。
ブルーチーズのニョッキ900円はちょいとクセのある風味が同じく個性豊かなクラフトビールにジャストマッチ! おすすめです。
と、ここで気づいたのは、フードはメニューが記されていますが本日の樽生以外にはお酒の品書きがないということ。初めてなら戸惑ってしまいそうですが……。
「お客さんとなるべく話をして、飲みたいものを選んでほしいと思ってるんです。実はワインも充実しているのでまずどっちを飲みたいかから始まって、軽いのか重いの、色は白っぽいのか黒っぽいの……などと好みを絞っていく感じで。ビールが苦手という方には、フルーツビールを薦めたりしますね」
こんなふうに会話の糸口を用意してくれるなら、初めてでもリラックスして楽しめますね。
実際、酒場慣れしていない若い子たちもよく訪れてここでいろいろな味に出合っているそうです。
「ビアバーだからって、ビールの話ばっかりするわけじゃない。ビールの話『も』楽しい、という感じで気楽に過ごしてもらいたいです」
柔和な表情の山下さんがこんな感じで迎えてくれるのだから安心ですね。ぜひ、あの緑色のお店に飛び込んでみてください。